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コモディティ化しないキャリアを意識する

CyberAgent Ventures, Inc. インドネシアオフィス代表 鈴木隆宏さん

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日本、中国、韓国、東南アジアを中心にIT系スタートアップカンパニーに投資を行うベンチャーキャピタル。自身も新規事業を2つ立ち上げた経験を持ち、数多くの起業家と接してきた鈴木氏が語る、インドネシアの今と日本人に向けてのメッセージとは。

 

Q.現在のインドネシアVCマーケットとCyberAgent Ventures, Inc.(以下CAV)についてお聞かせください。

最近は欧米系のVCや韓国、中国系のVCも出てきてかなり多国籍化しています。CAVはサイバーエージェントグループの投資子会社であり、ネットビジネスをやっている会社です。多くの事業立上げにおける経験をしているため、ノウハウが蓄積されています。そのため事業のアイデア段階から起業家と一丸となって考え、会社を立ち上げるスタイルの投資をしています。また私自身もサイバーエージェントで新規事業を2つ立ち上げ、学生時代にも仲間と事業を行っていた経験もあり、ある程度自分でビジネスを立ち上げるという経験をもっていたことが他のVCと比べて起業家から重宝がられている要因だと思います。10社近く投資を行っているのですが、事業の落とし穴がどこにあるのかある程度予想がつくようになってきました。
インドネシアで勢いのあるマーケットはEコマース分野だと思います。またインドネシアはスマートフォンユーザーが多いので、Eコマースに限らず様々なサービスが伸びていく余地はあると思います。

Q.今後、CAVとしてどこの国に注力して事業展開していく予定ですか。

引き続き日本、中国、韓国、東南アジアへ注力して行きますが、アジアナンバーワンのVCを作ろうと話をしているので、まだ具体的な話しは一切無いですがインドには注目しています。

Q.鈴木さんの今後について教えてください。

仮にこれからインドでVCをやろうと思っても、もうすでに著名なVCが数多くいるので自分のマーケットバリューがあまりないと思っています。一方でインドネシアでは、これから著名なVCが進出してくる段階なので、CAVが一歩先を行っている状況です。なので僕自身はインドネシアに長く居たいと思っています。その方が自分自身のマーケットバリューが出せると思っているので。またサイバーエージェントの本社にも中途半端に日本に帰すようなことはしないでくれと伝えています(笑)。より厳しい環境、かつこれから成長する市場で勝負したいと思っています。

Q.インドネシアの起業家について教えてください。

インドネシアには優秀な起業家が出てきています。アメリカの大学を卒業し、外資系金融や外資コンサルティングファーム、証券会社のトレーダー経験等を経てインドネシアで起業する人が増えつつあります。中には18歳で大学を卒業して米国のマイクロソフトへ入社し、22歳の時にインドネシアで起業といった方もお会いしたことがあります。
現在インドネシアは高度経済成長中と言ってもいいと思います。その中で多くの起業家が出てくるのは驚くことではありません。日本を見ても、一部の大手企業を除いてほとんどの会社が中小企業があり、その方たちも戦後復興から高度経済成長期のここ数十年の間に起業した方ばかりですから、そう考えると現在のインドネシアでオフライン・オンライン問わずに起業する人が多いのも自然だと思います。

Q.お会いする方は海外留学経験者が多いのでしょうか?

そうですね。特に起業家はアメリカやオーストラリア、日本への海外の大学を卒業した人が多いです。
また1980年代は国費留学で日本に留学する学生が多く、現在のインドネシア経済を支える財閥の人の中で日本語を話せる人がいます。現在では以前と違い欧米や、オーストラリアに留学する人が増えています。裕福な家の場合は、高校からシンガポールの高校に通わせる、という人もいます。

Q. 企業の「グローバル化」についてお聞かせください。

こちらにきて痛烈に感じたのは、日本の起業家も海外に出たいと言っていますが、日本と海外を分けた「日本」と「グローバル」という考え方に違和感を覚えています。ちょっとした違いなんですがインドネシアの場合、「グローバル」の中の「東南アジア」、その中の「インドネシア」と言う逆算した考え方でビジネスをしています。
グローバルで見た中の自分の立ち位置を理解しているのと、「日本」と「グローバル」と分けて考えているのでは、小さな違いですが結果として大きな差になって表れてくると思っています。
ビジネスに限らず人材面においても、自国で産まれだからと言って守られているわけではいないというのがわかっているという事です。マネージメント分野でも、インド人や欧米人がやっていたりする。これに危機感を持っているのがインドネシアの人たちだと思っています。
この辺りの気づきはまだ日本には弱いのかもしれません。

Q.アジアで働きたい日本人へメッセージをお願いします。

これは私自身の考え方なのですが、キャリアはコモディティ化するという事です。

例えば営業をやれる人は何百万人もいる。グローバルに見ると物凄い数います。また人事・経理等も同様の事が言えると思っています。エンジニアに関してはゼロからモノを産み出せるので価値が高まって行くと思っています。ただし一部の天才以外はほぼみんな横並びとなってしまう可能性もあると思います。
また飲食店やコンビニのスタッフ等も別に日本人である必要がどんどん無くなって来ている。

今後、ますます世界はフラットになっていくと考えてます。実際にインドネシアを見てみると、あるインドネシアの国営通信事業会社はマネージングダイレクターの数多くがインド人だったりします。日本で言うKDDIのような会社がマネージメントクラスに海外の優秀な人材を抜擢しています。インドネシアに限らず他の東南アジアも同様です。つまり国籍は関係なくなっています。

「こんな経験しました」、「こんなセールスやってきました」とかはコモディティ化して行き、誰かに取って代わってしまいます。そういったものに左右されなくなるためにも、キャリアの希少性を如何に作るかが大事だと思っています。

僕の場合だと、投資×ITでインドネシアのIT産業の初期段階に参入している。そして良い会社に投資も出来ているし、多くの情報も僕が持っているという事からもキャリアの希少性は高いと感じています。同じ様なプレイヤーが来たとしても、我々のようなVCは「どれだけ良い会社に投資しているか」が大事なので、スタンフォードやハーバードのMBAを取った人も物凄く優秀な人がインドネシアに入ってきつつありますが、これまでに良い会社に投資してきた実績もあるので、そう言った人たちにも負けないと思っています。

またサイバーエージェントに入社した当初からこだわってきたのは0から1をやりたい。つまり新規事業をやりたいと思ってきました。案外、新規事業のスペシャリストは世の中には少ないと思うんです。なぜなら新規事業をやる機会は少なく、そういうキャリアを積んでいる人も少ないからです。新規事業で何を学んだかを言葉にすることは難しいですが、その事業経験を何周、何回もしているという経験が強みになってくると感じます。

また、就職活動を開始する段階で世の中を知るのも良くないし遅すぎると思います。どこで働くかより、まず自分がどうありたいかという人生観を考えるところから始めた方が良いと思っています。そのあたりがわかってくると、自分のやりたい事が見えてきます。

就職先を企業名やブランドに左右されて決めるのではなく、自身に本当に合うと思う会社と出会う努力をして欲しいと思います。
そうでないと数年働く中でやっぱり合ってないなと感じ始めたりする。このような事は日本の新卒入社の方で経験した人は多いと思いますよ。

繰り返しになりますが単純な作業などは人に代わってロボットが行ったり、替えが効くキャリアは外国の人にとって代わっていってしまいます。コモディティ化しないキャリアを意識する事は大切だと考えています。

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